大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)728号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕第三、示談の抗弁について
被告は原告との間で本件事故による損害に関し示談が成立したと主張し、証人大浜保男は右主張に添う証言をするが、<証拠>によれば、昭和四三年一一月一日頃、原告被告間で、被告は、(一)原告の休業補償、治療費を負担する。(二)原告に後遺症が発生した場合には医師の特別認定に従つてこれを補償する、(三)原告の請求する慰藉料を負担する、との内容の協議がととのい、その旨の示談書が作成された事実が認められ、その文言自体や被告の支払われるべき金額が特定されていないことなどから、被告が示談書作成の時点における支払義務を確認したに止まり、右示談によつて原告の損害賠償請求権の行使が制限を受けるものと解することは到底できない。もつとも、右の示談書(甲第三号証の一、二)には「よつて今後本件に関しては如何なる事情が生じても双方決して異議申立訴訟等一切しないことを確約致します」なる記載があるが、右の示談書は保険会社や警察署等に備えつけられている定型的な用紙を用いたもので、右の記載部分も不動文字で記載されているものであることが右示談書の形式ならびに記載自体に照して明らかであり、また原・被告間の本件示談の内容が前認定のとおりであることからすれば、右の不動文字の部分はいわゆる例文にあたるもので、当事者を拘束するものと認めることは困難である。そして甲第四号証によるも被告主張事実を証するに足りず、他に、これを認めるに足る証拠はないので、よつて、被告の抗弁は採用できない。(吉崎直彌)